やっと出てきた放射線の影響についてのマスコミ報道

3・11大震災シリーズ(71) 
NNNドキュメント「THE 放射能 科学は放射線の影響にどこまで迫れるのか?」 
放送日時03月14日(月)0:551:50 
日本テレビで先日、放射線の問題についての特集番組が放映されました。福島原発由来の放射性物質による被ばくについては、外部被ばく100ミリシーベルト以上なら放射線の被害と認めるが、低線量の被ばくでは認められない、という見解を政府系列の医学者(御用学者)はとっています。低線量による内部被ばくの害を一切認めないという立場は、長崎や広島の原爆の被災者に対しても、また原発の近くに住む住民に対しても、さらに福島県民やホットスポットに住んでいる人達に対しても貫いてきているのです。そのことに対して問題提起をした素晴らしい内容の番組です。ぜひご覧ください。

また、2016年3月11日に放映の報道ステーションの内容も素晴らしです。

 

 

外部被ばくより、ずっと恐ろしい内部被ばく

 

        

 

放射線の影響には、瞬間的に高線量の放射線が、直接にDNAを破壊してガンを引き起こしたり、次世代への遺伝子障害を起こす直接作用と、低線量放射線が体の中にある水を電離してフリーラジカルが免疫細胞をっ攻撃して破壊する間接作用とがあります。

 

 

また、外部被ばくと内部被ばくの違いもあります。

 

外部被ばくとはガンマ線やX線、中性子線などの高線量の放射線を体の外から瞬時に浴びることです。ガンマ線の防御には熱さ10cmの鉛の板、中性子線には熱さ2mのコンクリートが必要とされています

 

 

 原爆に直撃された被ばく者(爆発から1分以内に被ばくした人)やJOC臨界事故(1999年9月)での2人の作業者は、体の外から高線量の放射線を大量に浴びてDNAがズタズタに 破壊されて亡くなりました。

 

 

 内部被ばくとは、ベータ線やアルファ線を放出する放射性物質が食物や呼吸とともに体の中に取り込まれて細胞の中に溜まると、細胞は至近距離から継続して放射線に直撃されます。放射性物質が体の外に排出されずに細胞の中に留まっている限り、人が機関銃で弾丸をずっと浴びせられることと同じなのです。

 

 

 国や電力会社は、人々の放射線への不安に対して、レントゲンをかけることになぞられて、その安全性を強調しますが、それは内部被ばくと外部被ばくとの違いを抜きにした「ごまかしの手段」です。レントゲンは外部被ばくであり、レントゲンをかけることの損得は個人の判断で決められます。

 

 

国や電力会社が「低線量の内部被ばくは人体への影響はない」と言っているのは、「機関銃で弾丸を浴びせ続けても、人は死なない」といっていることと同じで、まったく非科学的です。

 

長崎大学の七條和子助教らの研究グループが、「原爆の死の灰が原爆投下から60年以上経った今でも、死者の細胞の中で放射線を出し続けている様子を、世界で初めて確認した」ことが報じられました。(NHK総合テレビ 2009626日)

 

 

 

放射性物質は遺伝子を傷つける

 

 

 

放射線の問題は物質を構成している最小単位の原子から電子を引きはがす「電離作用」だと言われています。放射線はほとんどの物質を透過するほどの巨大なエネルギーを持っています。なぜ、ほんのわずかのエネルギーでも、放射線に被ばくすると人間が死んでしまうのかといえば、生命体を構成している分子結合のエネルギーレベルと、放射線の持つエネルギーレベルが10万倍も100万倍も異なっているからです。私たちのDNA(デオキシリボ核酸)を含めた身体、さらにはこの世のほとんどすべての物質は分子で構成されています。

 

 

分子とは、原子が結合してできているものですが、お互いが結びつくために使われているエネルギーは数電子ボルト程度です。しかし、放射線のエネルギーは数10万から数100万、場合によっては数千万電子ボルトにも達します。そのようなものが、身体に飛び込んでくれば、DNAを含め多数の分子の結合が切断されてしまうのです。

 

 

人の体は水素や酸素、炭素、窒素などの元素によって作られており、その元素からDNA、染色体、たんぱく質、アミノ酸、ホルモン、水などさまざまな化合物が作られ、さらに細胞や器官が作られています。それらの化合物は「化学結合(分子結合)」というエネルギーで結合しています。放射線の問題は、これらの化学結合をバラバラに切断してしまうということなのです。

 

 

放射線の放つエネルギーは、体内の分子を結合するエネルギーを1とすれば、X線でその1万倍もあります。医療で使われるレントゲン撮影も危険であるため、医師や看護婦は鉛の壁などで防御された撮影室に患者を入れて、自分は室外から撮影します。セシウム137では10万倍、プルトニウム239は100万倍という巨大なエネルギーを持っているので、被ばくすると人体に遺伝的な放射能障害を引き起こすのです。


 つまり、人が放射線を浴びるということは、電離作用を受けて化学結合を破壊されることになり、体にとってはとんでもないぶち壊しになってしまうのです。そのために、放射線や放射能は「殺人光線」とか「死の灰」などの呼ばれるのです。ようするに化学結合が分断されることで、アミノ産やたんぱく質が原料で出来上がっているDNAやRNA、酵素やホルモン、コラーゲンなどの人体の成長、発育、生殖、新陳代謝等に密接に関わる機能が失われてしまうことになるのです。

 

 

とくに遺伝子を傷つける作用の強いのが中性子線です。原発のプルサーマル発電で使われるプルトニウムとウランを混合したMOX燃料が危険なのは、それが放出する放射能の量が半端ではないとうことです。MOX燃料とウラン燃料を比較するとガンマ線で20倍、中性子線で1万倍、アルファ線で15万倍という、とてつもない危険性を持っているのがMOX燃料なのです。もしこれが漏れ出せば、大変な大惨事となります。(福島原発3号機がこのMOX燃料を使用していました)

 

 

中性子線は粒子であり、原子核の陽子を跳ね飛ばしたり、原子核の中に入り込んで、その原子を放射能にかえる放射化の作用があります。電気的に中性なので透過力が一番強く、破壊力も強いので、中性子爆弾として、戦車の分厚い装甲を貫いて中の兵士を殺傷するための兵器開発で使われたこともありました。

 

 

生命を司るDNAや染色体が電離作用を受けることが最も危険です。放射線の電離作用は10億分の1秒という瞬間に行われるので、少量なら安全とか、ゆっくり当てれば安全という理屈は成り立たないのです。


 今まで、低線量の内部被ばくについては極端に過小評価され、無視することができるほど小さいと信じられてきました。ところが、逆に低線量の継続的な内部被ばくの方がはるかに危険だという主張をしている学者もいるのです。実際、チェルノブイリ原発事故のデータでは、高線量の外部被ばくと比べると、線量がゼロに近づく境界付近でかえって影響が強くなることが確かめられたのです。

 

 

ジェイ М.グールドらの著書『死にいたる虚構』の中で、「低線量放射線による慢性的な被ばくは、同時には、ほんのわずかのフリーラジカルが作られるだけであり、これらのフリーラジカルは血液細胞の細胞膜に非常に効率よく到達し、透過する。そして、非常に少量の放射線の吸収にもかかわらず、免疫系全体の統合性に障害を与える。それと対照的に、瞬間的で強い放射線被ばくは、大量のフリーラジカルを生成し、そのため互いにぶつかり合って、無害な普通の酸素分子になってしまうため、かえって細胞膜への障害は少ない。」と言っています。

 

 

また、「チャールズ・ワイドレンと共同研究者たちも、極めて低い線量の放射線の場合、高線量を用いた通常の方法やX線装置から瞬間照射の場合よりも200倍も効果的に突然変異が生じることを発見した。」と書かれています。ということは、内部被ばくの方が外部被ばくよりも、はるかにがんになる確率が高くなるということなのです。

 

 

東京大学工学部の安斎育郎博士によると細胞の放射線感受性には三つの大まかなルールが成り立つとしています。①細胞が未分化なものほど、②細胞分裂が盛んなものほど、③細胞の一生のうち、分裂期が長いものほど、放射線の感受性が強いとされています。白血球やリンパ球などを作りだすのが赤血球であり、赤血球は腸の絨毛にある造血幹細胞であると千島学説では捉えているので、この赤血球や腸の絨毛が被ばくによる被害を一番受けるということになります。

 

 

また、細胞の新陳代謝が盛んな甲状腺や骨髄、生殖器、皮膚などの細胞も影響を受けやすいということになります。そして何よりも、細胞の新陳代謝が盛んな幼児期や胎児期が最も放射線の被害を受けるということになるのです。

 

 

生命を司るDNAや染色体が電離作用を受けることが最も危険なのです。遺伝的な素質を伝える生殖腺の被ばくが一番の問題となるでしょう。さらに遺伝的な影響にとって最も問題となるのは、将来子供をたくさん作る可能性をもった子供たちの被ばくです。ですから子供が生殖線を被ばくすることは極力避けなければならず、外部被ばくだけでなく、水や食物、空気からもたらされる内部被ばくについても注意が必要となります。

 

 

『家族を内部被ばくから守る食事法』岡部賢二著 廣済堂出版 より