オートファジー機能でウイルスを退治する

われわれの細胞には自食機能(オートファジー)があり、細胞内の不要なタンパク質やウイルスなどをお掃除してくれます。

 

この機能を高めれば、感染症の予防になるだけでなく、身体の老化を予防することもできるようになります。

 

日本でガンで亡くなる方は年間38万人くらいですので、感染症で亡くなる方よりもはるかに多いです。

こうした慢性疾患にもオートファジーが予防効果を発揮してくれます。

 

オートファージー機能は飢餓状態の時に働くので、プチ断食を定期的に実践していれば、感染症のリスクが減らせます。玄米甘酒を用いた新月と満月の夜抜きプチ断食は、最小の労力で最大の効果を売ることができるのでおすすめです。ぜひ、実践してみてください。

 

オートファジーとカロリー制限

 

 

注目のオートファジー 細胞内を浄化し健全に

 

 

大隅良典博士が「オートファジーのメカニズムの発見」によりノーベル生理学・医学賞を受賞されました。オートファジーは細胞内の浄化とタンパク質のリサイクルの働きをいいます。細胞内には小さな“掃除機”があり、不要な物質を分解して再利用し、細胞を健全な状態に維持しています。この働きが解明されると病気の治療や老化防止に役立つということで注目されているのです。

 

 

オートファジーとはギリシャ語で「自食」を意味し、細胞質内にたまった古いタンパク質などの不要物質(ゴミ)を取り除く掃除システムです。細胞質の中に二重の膜でできた平たい袋(隔離壁)が作られ、周囲の細胞質を無作為に取り囲んで袋を閉じ、細胞内の廃棄工場へ運びます。そして工場内の消化液の中に積み荷を放出して分解(消化)し、残った有用なものは細胞質に戻されて再利用されます。

病気の治療や改善などに期待される機能 ウイルス対策にも!

 

 

また、オートファジーは細胞質内に侵入した有害なウイルスや細菌を取り除く生体の防御機能の働きも持っています。さらに細胞内でエネルギーを生産しているミトコンドリアに欠陥が見つかると壊す役割も担っています。ミトコンドリアが傷つくと通常の10倍もの活性酸素を放出するため、既存の細胞の解毒システムでは対応できなくなります。こうした致命的な欠陥を防ぐための安全装置としてオートファジーは機能しているのです。

 

 

オートファジー機能は加齢とともに低下していきます。そして、異常のあるタンパク質やミトコンドリアなどの細胞小器官を効率よく取り除けなくなると、細胞内のあちこちにダメージが蓄積し、病気を引き起こします。このオートファジーのシステム障害が脳の神経細胞で起こると脳の老化が進み、アルツハイマー病の発症につながります。また、消化器官中のオートファジー機能が損なわれると潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性の腸疾患を招く危険性があります。

 

 

反対にオートファジー機能を活性化できれば神経細胞のダメージによる疾患であるアルツハイマーやパーキンソン病といった病気の改善に活用できるということになります。さらには増加の一途をたどる悪性腫瘍(がん細胞)の遺伝子の傷を修復し、腫瘍の発生を抑えたり、細胞を常に新鮮な状態に保つことで老化を防ぎ、寿命を延ばしたりすることも期待できます。しかし、このオートファジーの制御は、まだ人為的にはできません。

飢餓状態にするとオートファジーが活発に

 

 

 ところが、飢餓状態にすると、オートファジー機能が顕著に活性化できることがわかったのです。マウスの実験では、エサを与えるのを止めてから6時間で肝細胞のオートファジーが働きだし、24時間もすれば全身の細胞でオートファジーが活発になることが確認されています。人間で言うならば、24時間の断食で肝臓のオートファジーが活発化し、3日間の断食で全身のオートファジーが活性化されると言ってもよいでしょう。

 

 

 実際に、カロリー制限(ただし必須栄養は適切に与える)をすると動物の寿命が延びることはアメリカのコーネル大学やウィスコンシン大学でのマウスや猿を使った実験で証明されています。カロリーを60%に制限したマウスは好き放題食べたマウスに比べて2倍生きたこと、節食した猿はカロリー制限をしなかった猿より生存率が1.6倍になり、病死も3分の1に減ったことが報告されています。

 

オートファジーの活性化にプチ断食が有効

 

 

 私たちは食事から毎日70~80gのタンパク質を摂取していますが、私たちの体内では毎日300gほどのタンパク質が作られています。その足りない分を補っているのがオートファジー機能で、細胞内の不要なタンパク質をアミノ酸に分解し、それを再利用するというタンパク質のリサイクルシステムが存在することがわかったのです。つまり、人体のタンパク質の材料の多くが食事ではなく、自分自身の分解産物によって作られているということになります。

 

 

 これは、栄養が足りないという危機に直面したときに発動される危機管理システムと言えます。生まれたばかりの赤ちゃんは、ヘソの緒が断たれた緊急事態への対応としてオートファジー機能が活発化しています。私たちも時々、人為的に飢餓状態を作り出すことで、危機管理機能を発動させることができるのです。これは細胞の浄化とタンパク質のリサイクルというオートファジー機能の活性化にプチ断食が有効であることが、オートファジーの研究で科学的に証明されたと言ってもよいでしょう。

 

「むすび誌」(正食協会)2017年1月号 連載記事 文 岡部賢二