10.純白の金 吉野葛 食の効用ABC

10.純白の金 吉野葛

純白の金 吉野葛

 葛粉は山野に自生する生命力の強い葛の根から取る良質のでんぷん質です。古来より、穀物の乏しい山間地方で米や麦の代用とされ、病人食に、そして災害や飢饉の備蓄食として、また修験道の行者の携行食や武士の野戦食として使われてきました。葛粉は数あるでんぷんのなかで、きめの細やかさと素材のうまみをいかす力に優れ、世界でもっとも質の高い料理用でんぷんと評価されています。また薬効にも優れ、子どものころは風邪をひいてもお腹をこわしても葛湯でした。葛を配合した葛根湯は漢方の風邪薬としておなじみです。


<葛粉の製法>
 花も葉も散ったあと、寒さに備えてたっぷりと養分を蓄えて太った根を掘り出し、綿のように砕いて寒の水にさらします。寒ざらしといって、空気も水も冷たいほうがいい葛粉ができます。凍りつく寒さのなかで何度も水にさらされ、灰色の葛が純白になっていきます。水が冷たいこと、いい水であることが葛精製の生命で、葛づくりはひたすら水で清める作業といえます。わき水と厳しい寒さのおかげで、吉野では昔から良質の葛粉がつくられてきました。根っこから食べられるようになるまで、ざっと二カ月かかります。一キロの葛根からわずか百グラムしか取れません。葛粉はまさに職人さんの手間とひまの結晶といえます。


<よい葛粉の見分け方>
 寒さや厳しさという陰性に鍛えられ、締まった陽性なでんぷんは粒子が小さいの で、葛粉を指でこするとキュッキュッという音がします。ザラザラするものは陰性粒子の大きいジャガイモでんぷんが含まれていますから注意してください。舌 の上に乗せてすぐに浸透する葛は本物です。舌の上でいつまでも残るものや、火にかけてすぐに透明になるものは偽物(陰性)と判断します。片栗粉と違い、葛 粉は陽性ですから水でないと溶けません(陽性なお湯では固まってしまいます)。じっくりと火を通した葛湯は消化がよく、冬の寒い時期や体の冷える人に最適 の保温食・栄養食といえるでしょう。


<風邪の万能薬>
 葛の薬効は優れた発汗・解熱作 用です。葛湯は飲むとすぐに体が温まって汗が出てきます。風邪のひき始めで寒気がしたり熱っぽいときなら、体温の上昇とともに汗が気持よく出て、自然に熱 が下がってきます。子どもは本来陽性なので、子どもが調子を崩したときには、塩気のきいた陽性な梅醤番茶よりも中庸のでんぷん質の葛粉のほうが適していま す。葛湯に梅肉エキスを入れ、ハチミツや米飴で少し甘みをつけて飲ませるとより効果的です。大人の風邪には葛梅醤番茶がよいでしょう。せきを伴う風邪や冷 え性、リュウマチ、ぜんそくの人にはレンコン湯がよくききます。皮つきのレンコンをすりおろしたものを小さじ一杯強に醤油小さじ一~二杯と葛粉小さじ一杯 強に熱湯百五十CCを注ぎ、透明になるまで火にかけます。レンコンのない時期はレンコンの粉末「コーレン」を使います。また、葛には消化吸収をよくして腸 の働きを整える作用もあるので、便秘や下痢にも有効です。


<肩こり・不眠症の特効薬>
  葛には筋肉の緊張をゆるめて血液循環をよくする作用があります。首や肩のこり、痛みがとれていきます。また、頭痛や耳鳴り、目の疲れ、イライラや不眠症な ど脳血管系の障害に有効です。これは東京大学薬学部の研究で、葛に含まれるイソフラボノイド(ダイゼイン)という成分の働きであることが確認されています。自律神経の安定に葛粉は最適です。


<高血圧の予防薬>
  葛粉の注目すべき点は、高血圧やそれに伴う症状にも効果を発揮することです。葛粉のイソフラボノイドが血管の緊張をゆるめる結果、血圧が下がるのです。高 血圧と関係が深い狭心症の予防にも役立ちます。狭心症は心臓のまわりを走っている環状動脈が緊張して狭くなり、血液が流れにくくなって起こりますが、葛粉 は環状動脈の緊張をとき、ゆるめて血行をよくしてくれます。また、子どものひきつけやけいれん、お年寄りの硬直などにも効能があります。これらは副交感神 経お刺激して緊張をゆるめ、消化器官を活性化し、血液循環をよくする葛粉の働きによるものです。心の緊張がストレスやイライラですから、精神安定効果のあ る自然薬としても活用するとよいと思います。