13.大豆食品の優等生 高野豆腐 食の効用ABC

13.大豆食品の優等生 高野豆腐

大豆食品の優等生 高野豆腐

日本の風土が生んだ最高の栄養食


 日本には昔から凍結と乾燥をさせてつくる凍み大根や凍みコンニャク、寒天などの伝統食品がいくつかあります。なかでも高野豆腐は大豆の風味と栄養価を濃縮した、数百年来の伝統をもつ保存食です。


 もともと高野豆腐は高野山の禅僧が保存食としてつくったといわれ、精進料理の普及とともに「高野豆腐」の名で広まりました。信州では武田信玄が兵糧としてつくらせたともいわれ、「凍み豆腐」あるいは「凍り豆腐」とも呼ばれています。
 木綿豆腐の2倍量の大豆でつくった硬い豆腐を薄切りにして、寒気で凍らせ、天日で乾かすと豆腐の干物・高野豆腐ができます。風のない夜に氷点下5度まで外気温が下がらないと、きめ細やかな上質のものはできません。昼夜の寒暖の差が大きく、湿気の少ない長野や東北地方、高野山などが生産に適しています。

一般に売られている高野豆腐は人工凍結、熱風乾燥が主流ですが、本来の高野豆腐は自然が相手の大変手間ひまかかるもので、日本の風土が生んだすばらしい伝統食といえます。


消化の良い上質のたんぱく源


 高野豆腐の一片は豆腐の四丁半分にあたるといわれ、栄養価が高く、たんぱく質を50パーセントも含みます。100グラム中のたんぱく質は牛肉で20グラム、鳥肉で12グラムですから、動物性たんぱく質と比較しても遜色ありませ ん。畑の肉といわえる大豆が原料なので、必須アミノ酸のバランスがよく、人の乳に近い状態であるといわれています。しかも高野豆腐のたんぱく質は、大変消化が良いことが特徴です。大豆は本来消化があまりよくありませんが、これを豆腐にしてからさらに凍結・乾燥すると、消化吸収力が格段に良くなります。したがって、胃腸 の弱いお年寄りやアレルギーのお子さんにとくにおすすめです。
 また、豆腐にはカリウムという体を冷やす成分が多いので、暑い夏には冷ややっこで 食べると体を適度に冷やしてくれます。しかし、寒い冬や冷え性の人には、高野豆腐のほうが体を冷やさないので適しています。豆腐に寒さと乾燥という厳しさ を加えて陽性化した高野豆腐は、冬場の体の保温食といえます。


優れた骨の強化食


 丈夫な骨は、コラーゲンという繊維状のたんぱく質に、カルシウムをはじめとしたミネラルが結合してできています。高野豆腐にはカルシウムが100グラム中に590ミリグラムと、牛乳の6倍も含まれています。しかもカルシウムの吸収率を高める良質のたんぱく質と、カルシウムが骨へ定着するのを助けるビタミンDも豊富です。
 また、高野豆腐には骨をつくるために不可欠なコラーゲンの主成分となるアミノ酸と、骨からカルシウムが溶け出すのを抑えて、骨粗しょう症を予防するイソフラボンという成分を豊富に含んでいます。さらにカルシウムの働きを正常に保ち、骨をつくる材料となるマグネシウム、骨の新陳代謝を活発にし、若々しい骨を維持する亜鉛やビタミンKといった微量成分にも優れています。高野豆腐はまさに骨を強化する最高のバランス食といえるでしょう。


コレステロールの抑制作用


 高野豆腐には、大豆たんぱく質や豆腐よりさらに強力に血中のコレステロールを抑制する働きがあることが、大阪市立大学の中谷延二教授らの実験で確認されています。これは高野豆腐のたんぱく質が凍結によって変性し、食物繊維的な働きをするようになったと考えられています。こうしたたんぱく質には体の中で代 謝(体の中での分解)をより促進する働きが生まれるため、コレステロールの代謝が活性化するのです。さらに高野豆腐に濃縮されて含まれているリノール酸、 レシチン、ビタミンEなどが総合的に働いてコレステロールを強力に抑え込みます。


皮膚の強化食


 古い皮膚の下では新しい皮膚がつくられていますが、亜鉛が不足すると細胞の分裂や再生がうまく行われなくなり、古い皮膚は新しい皮膚と入れ替わることができなくなります。また、肌の再生がうまくできなくなると、シミやソバカスなどが肌にいつまでも残ることになります。皮膚の主成分はたんぱく質で、この皮膚 ほどたんぱく質を消費するところはありません。高野豆腐には細胞の分裂や増殖に深くかかわる亜鉛と、丈夫な皮膚をつくる良質のたんぱく質が豊富に含まれています。アトピー性皮膚炎や床ずれ、抜け毛、肌荒れがひどい人には高野豆腐がおすすめです。
 高野豆腐は鍋物やつけ焼き、ごまよごしにしても楽しめますし、巻き寿司やちらし寿司の具、田楽、天ぷら、はさみ揚げ、あるいは洋風、中華風の料理にも幅広く使える食品です。できれば1日1回、少なくとも週に3~4回は食べたいものです。